岩槻人形協同組合・商店街のポイント事業・岩槻黒奴保存会などの若手事業者や区民を中心に構成された「岩槻まちの戦略会議」。穏やかな集まりで意見交換の場をつくり出しています。
今回は、その中心メンバーの中から加藤さん、田中さんに岩槻での暮らしの魅力や「まちの戦略会議」が目指している岩槻の未来についてお聞きしました。
加藤広隆さん
理容店を経営している加藤広隆さん(55歳)。以前から、商工会や黒奴保存会の活動に積極的に関わってきました。子どもの頃の思い出とともに大好きな岩槻について語ってくださいました。
田中隆介さん
化粧品店を経営する田中隆介さん(40歳)。駅前の再開発ビル内にある店舗を営む傍ら、商店街の店舗を貸し出して、不動産オーナーの立場から「リノベーションまちづくり」の活動に協力しています。「ショッピングモールに行かなくても良いまちなんだよ!」と岩槻のまち自慢をしていただきました。
―――「まちの戦略会議」の目的や活動内容を教えてください。
田中:岩槻のまちをもっと元気にする「まちのビジョン」を検討し、その活動の中で、岩槻の事業者が潤う仕掛けをつくることを目的として活動しています。
岩槻人形協同組合・商店会(商工会)・黒奴保存会の若手メンバーなどが集まり、そこに学識経験者や地元のまちづくり協力者がオブザーバーで参加し、行政であるさいたま市の関係部局とも連携しています。
―――活動を始めた経緯を教えてください。
加藤:もともとは流通科学大学の新(あらた)先生を招いて「社会学から見た岩槻」をテーマにした勉強会から始まったのです。岩槻の商業の偏差値が39だと言われました。
(お二人とも顔を見合わせて苦笑いでした!)
田中:それをきっかけに講演会参加者が集まり、平成28年度から「岩槻まちの戦略会議」として始動しました。
令和2年に「さいたま市岩槻人形博物館」が開館するにあたり、それに伴う準備と「箱モノ」だけに頼るのではない、岩槻らしいまちづくりを最初の目標としました。
―――どのような活動をしてきたのですか?
田中:情報発信とイベント開催で交流の場をつくり、岩槻を盛り上げたいと考えて活動してきました。
平成28年度に実施したイベントの調査や昭和の岩槻を知る方々へのインタビュー、平成29年度に実施したモニターツアーを通して、まちの課題に気づき、それを元にマップづくりやイベントを企画・開催してきました。
加藤:平成29年度、平成30年度はまち歩きで疲れたときにちょっと休憩しながら立ち寄ることができる「岩槻ちょっと市」、平成31年度(令和元年度)は「人形のまち岩槻 まちかど雛めぐり」の時期に合わせて、「岩槻ちょっと市」を発展させた「ひな市」を開催しました。
「ひな市」は、人形屋さんをもっと表に出したい、紹介したいという思いで開催しました。
伝統の技術を生かした小物がよく売れていましたよ。
平成31年度(令和元年度)には、情報発信の一環として検討を進めていた「岩槻探検・はっけん地図」の発行も行いました。
田中:令和2年度は、岩槻駅西口住民と東口事業者との交流を目的とした「お店探検まち歩きツアー」を実施し、西口に住んでいる小学生の親子を対象に、まちの戦略会議メンバーが東口にあるお店を紹介したり、まちの見どころを案内したりするモニターツアーを試みました。
―――これまでも岩槻では、さまざまなイベントが開催されていましたね。実行委員会がいくつもできたと思うのですが、それぞれ連携して動くこともあるのですか?
加藤:以前は、岩槻まつりでは、人形組合・黒奴保存会・商工会などがそれぞれ参加していましたが、垣根のようなものがあった気もします。自分たちが各々の団体の中で頑張っていた感じです。
そのうちに、それぞれの得意、不得意(できる、できない)に気がつき、少しずつ「つながり方」を意識するようになりました。
―――岩槻をより魅力的なまちにするために、今後どのような活動を考えていますか?
加藤:そうですね。やはり人形屋さんには、これからも頑張ってほしいという思いが強いです。表に出していきたいですね。若い人たちに代替わりしてきた時期でもありますが、適度な距離感でだいぶ垣根が低くなった気がします。
また、栄町通り商店街にリノベーションまちづくりの取り組みをきっかけに新しくオープンした、お茶とスパイス料理のカフェ「ChaTora」では、地元出身の若者が、今はない昔の地名をお茶の名前に付けるなど、ずっと岩槻に住んでいる自分たちでは思いつかないようなアイディアを活かして営業するなど、新しい風も吹きつつあります。
加藤・田中:今後も、長く岩槻に住んでいる人も新しく岩槻に来た人も、地域の人が地域の魅力を再発見できるような情報発信と交流の場をつくっていきたいと考えています。
―――ところで、お二人は岩槻のどんなところが好きですか?
加藤:岩槻は、暮らしやすいまちです。休日に遊びに行くのも東京ではなく大宮止まり・・・。
岩槻の人は、あまり口には出さないけれど、岩槻が好きなのでしょうね。昔ながらのお店もまだまだ残っています。
例えば金物屋さん。商品の品揃えも豊富です。たくさんある鍋の中で我が家にはどれがいいかな、と迷っていると「5人家族で食べるなら、これなんかいいんじゃない?」とお店の人がぴったりの鍋を出してきます。ホームセンターではなかなかできない会話でしょ。
田中:岩槻は、ショッピングモールに行かなくても用が済むし、十分楽しめる街です。
加藤:人形作りの歴史とか文化とか、特に教え込まれた記憶はないですが、子どもの頃から毎日のように人形づくりを見て、周りの大人の会話の中から常に身近な存在として人形づくりの文化が存在していたのでしょう。
田中:今でも、小学校低学年で人形工房に見学に行ったり、6年生になると木目込み人形作りを体験したりします。その経験が大人になっても感覚の中で残っているのでしょうね。
加藤:人形工房の膠(にかわ)や松脂(まつやに)の匂い、おが屑の匂いを懐かしく思ったりします。そのくらい、人形づくりが盛んなまちだったのですよ。
―――岩槻に来た人に、こんな場所やこんなシーンで楽しんでほしい、と思うことを教えてください。
加藤:城下町の街並みを想像しながら歩くのもおススメです。江戸時代には、この街なかを将軍が歩いたなんてすごいと思いませんか?
春の岩槻城址公園の桜は是非、見てほしいです。城跡の段差のある場所で段々に咲いている桜と赤い橋「八つ橋」をいっしょに眺められる景色がおすすめです。
田中:秋のコスモスまつりでコスモス摘みもいいですよ。子どもも大人も楽しめます。
田中:大人向けは、慈恩寺に行ったあと昔ながらの中華屋さん永楽で乾杯!もいいですね。
第六天神社まで足を延ばして近くのうなぎ屋さんで食事もおススメ。
久伊豆神社の参道は、夏でも涼しいです。落ち着いた雰囲気の境内を歩いてみてください。
加藤:岩槻人形博物館の敷地内にある「にぎわい交流館いわつき」には、まち歩きの役に立つ地図があります。
私たちが発行した「岩槻探検・はっけん地図」は、城下町ならではの細い裏道や私たちが子どものころに遊んだ場所を思い出しながら作成しました。昭和の時代を思い描きながら歩くのもおススメです。
―――気軽に参加できるようなイベントなどを教えてください。
加藤:岩槻では毎月何かしら開催されています。誰でも気軽に楽しめますよ。
加藤・田中:2月から3月にかけては「まちかど雛めぐり」、「ひな市」が開催されます。街のあちらこちらで人形が展示されています。岩槻以外からも毎年このイベントを楽しみにやってくる方も多いです。
8月の「岩槻まつり」は、屋台がたくさん出て大勢の人で賑わいます。
秋には「やまぶきまつり」や11月の「鷹狩り」もあります。どれも気軽に観てほしいイベント。それ以外にも毎月朝市が開催されるので、買い物だけでなく、地元のひとと気軽にコミュニケーションと取るきっかけとなるでしょう。
イベントだけでなく岩槻のまちを散策して、岩槻の良さを発見してください!
お話を聞く前のあいさつをしたときに、お二人とも「岩槻の魅力ねー?」「うーん、何にも無いよ」と一言。
しかし、話し始めると何にもないどころか、どんどん「岩槻愛」がこみ上げてきたのを感じました。ずっとこの場所で暮らしていると当たり前になっているので、良いところや好きなところを忘れがちなのかもしれません。だからこそ、外から岩槻を訪れた人が、ほかには無い「岩槻の良さ」を発見して感動したことを伝えるのも良いかもしれないですね。
そんなコミュニケーションの場を「岩槻まちの戦略会議」の皆さんがつくってくださるといいなと思いました。
帰り際にも「いろいろ見ていってね!」と声をかけてくださいました。
本当に岩槻が大好きな方々がこれからもいろいろな人を巻き込んでまちを元気にしていくのだと思うと、頼もしい気持ちでワクワクしました!
・岩槻人形協同組合
https://www.doll.or.jp/event/
・岩槻黒奴保存会(Facebook)
https://www.facebook.com/kuroyakko/
・まち探検ツアー
https://www.urawamisono-iwatsuki.info/blog/iwatsuki/post-82.html