初めて岩槻の取材に訪れてから10年。「人形づくり」の伝統や文化が受け継がれ、城下町としての歴史的な街並みを残しつつも、ここ数年で岩槻駅周辺には新しい変化が生まれているように感じます。
曜日ごとに個性豊かな店主が憩いの場を提供する「シェアキッチンChaTora」、地域の小学校とのコラボ商品も話題の「MIYATAYA BAGEL」、親と子が健やかに成長できる場所「Nook&Park」など、新しい店舗や居場所が誕生!新しく岩槻に入ってきた人や若い創業者が積極的に商店街と関わっています。
まちの変化について、長年岩槻のまちづくりに関わり、自身も駅前の商業施設「WATSU」で化粧品店「銀座ViVi岩槻店」を営む田中隆介(たなかりゅうすけ)さんにインタビューしました!
―――駅周辺の様子についてお聞きします。ここ数年で、新しい店舗や事業者さんが増えて、岩槻のまちが変わったように感じます!
そうですね。ここ1~2年はいろいろな方に「岩槻は動いているね」「自分たちのまちでは、ここまではできないよ」と言われて、あーそうなのかな、と思うこともあります。
ただ正直、岩槻に住んでいる人からすると、まちにはシャッターの閉まっている店も多いので、まだまだこれから!という感じです(笑)
―――そうなのですね。田中さんは今までどのような活動に取り組んできたのですか?
「岩槻まちの戦略会議」のほかに、2年前(令和5年)から岩槻まつりの実行委員会に入りました。世代交代を機に、お祭りも若返りしようという考えから、若い人が何人か入った中の一人です。
月に一回、駅前のクレセントモールにて開催している「ストリートマルシェ」の立ち上げにも関わりました。休日は大宮などに出かけるのではなく、岩槻の駅周辺でも楽しんでほしいという想いがあります。
また、「岩槻まちゼミ」はコロナ禍でもできる企画だったので3年前(令和4年度)にはじめ、今回で第6回を迎えました。回を重ねるごとに参加する事業者や講座の数も増え、今では第1回目の時の倍以上になりました。
―――地域の魅力を再発見できるようなイベントの開催や、まちの事業者がお客さんと交流する場を作るために様々な活動をされてきたのですね!さらに「岩槻リノベーションまちづくり」にオーナーとして参加されたとか?
はい。現在の「シェアキッチンChaTora」は、もともと自分の化粧品店でした。
実は当初、オーナーとして不動産を提供することを、まちの先輩方に疑問視されていましたが、ちょうど店舗移転のタイミング。この店が空き店舗となることが申し訳ないという気持ちがありましたし、商店街にとっても、若いパワーが必要なのかも、と決意しました。
単純に、この取り組みで商店街のシャッターがどんどん開いていったら面白いなという期待感がすごくありました!
※「リノベーションまちづくり」とは
空き家・空き店舗(遊休不動産)や地域の人材や産業などの地域資源を活用して、まちに新しい価値を生み出すことで経営課題を解決し、地域の再生を目的とした民間主導型の公民連携事業。
―――ずばり、「岩槻リノベーションまちづくり」の効果は何でしょう?
「岩槻まちゼミ」もそうですが、若い人たちが関わってくれることですね。「岩槻リノベーションまちづくり」の取り組みに参加したり、そこで事業化した人たちが、自分の専門分野で「岩槻まちゼミ」の講師になったり。まちの中に溶け込んでいるというか、ずっと岩槻に住んでいた人もそうでない人も、自分ができることでまちと関わろうとしていると思います。「これやってみよう!」という若いエネルギーが目に見えて伝わってきます。
「地域おこし」には様々な視点があると思いますが、この「岩槻リノベーションまちづくり」は創業してビジネスとしてまちの魅力を発信していくので、関わってくる人の本気を感じます。
(左:MIYATAYA BAGEL 右:Nook&Park)
―――オーナーとして参加して良かったことや、まちが変わったと思うことはありますか?
はじめは商店街の総会や、飲み会などの会合に呼ばれて私が参加していたのですが、今は「シェアキッチンChaTora」を運営する岩槻家守舎のメンバーが参加しています。商店街のお祭りも岩槻家守舎の3人のような、若い人が中心となってやっているようですし、商店街の電柱に造花を飾る慣習があるのですが、それも彼らがデザインしたフラッグに入れ替わりました。
若い人たちが楽しみながら、商店街の一員として活躍できているのではないでしょうか。自分が早く退くことも大切だったと思います。
―――今後の展望についてお聞かせください。
まちとしての一体感がないので、「このまちってこういうまちだよね!」という現在から将来までの1枚の大きな絵を描きたいです!
さらに、デジタルで岩槻の見どころや飲食店など全てがわかる案内サイトができるといいですね。訪れた人の知りたいことに何でも答えてくれるような。
それを長く続けるには、収益の視点を踏まえて運営していくことが大切だと考えています。
田中さんは、これだけ多くのまちづくりに関わっているからこそ、もっともっと魅力的な岩槻を発信したい!と思っているように感じました。
一方、新しく外から来た人には岩槻はどう見えているのでしょうか?
1年半前(令和5年)から岩槻に住んでいる田元(たもと)さんご家族に話を伺いました!
―――岩槻に引っ越したきっかけを教えてください。
娘家族の子育てを手伝うために引っ越してきました。岩槻がどんなまちなのか、正直、住むまで何も知りませんでした。
―――「シェアキッチンChaTora」で、クロワッサンスイーツを提供するカフェの営業をされていたそうですね。その出会いは何だったのですか?
まちの情報を知りたかったので岩槻について調べてみました。そこで、娘家族が「岩槻リノベーションまちづくり」の取り組みや、地域との関わりのきっかけになりそうな「Cleanup&Coffee Club@岩槻(通称:CCC)」の活動を見つけてくれたのです。
もともと自分で作ったものを販売したりマルシェに出店したりしたいと夢見ていたので、シェアキッチンがあることを知ってすぐに飛びつきました。
以前住んでいたところは近くにシェアキッチンはありませんでしたし、岩槻のように気軽に参加できるマルシェやイベントがありませんでしたから。
―――「やってみよう!」とチャレンジできる場所があったのですね。
はい。岩槻はチャレンジできる場所や機会がたくさんあるので、自分も前に踏み出すことができたのだと思います。
今は、「シェアキッチンChaTora」に遊びに行くのが楽しみです!
―――まちと関わる中で感じた岩槻の魅力を教えてください。
身近に夢を表現する場所があるのが岩槻、だと実感しています。
「岩槻リノベーションまちづくり」の中で実施された「いわつき小商いの学校」の中で、自分の取り組みを紹介させていただいた時、身近にこんなに「やりたい」「作りたい」という人が多いのかとびっくりしました。以前は、「ものづくり」や「手づくり」の話をする相手がいなかったのに、ここでは熱意のある人が多くて、話をするのが楽しいです。
岩槻はもともと「人形づくり」で有名なまちなのだと後で知りました。だからものを作ることが好きな人が多いのかもしれませんね。
また、商業の話やリノベーションなどの「まちづくりの魅力」は、ここに住むまで知りませんでした。まちづくりに対して活発な地域だな、と感じています。
さらに、岩槻は子育てしやすいまちです。子どもを遊ばせる大きい公園もあり、自然を感じられる場所がたくさんあります。子育てをしている世代としては、有り難いなと思っています。
―――今後、どういうまちになるとより住みやすいですか?
部分的に見るとまちが活性化していると思うのですが、この動きが広がって、商店街のシャッターがもっとたくさん開いていくといいですね。
「商店街のシャッターがもっとたくさん開くと良い」という田元さんご家族の願い。実は、まちづくりの活動を続けてきた田中さんも以下のように話していました。
「いろいろ変わってきたものの、ここで終わりとは思わないです。最終的にはシャッターがどんどん開いていくと、もっと面白いことができると思います。本当に変わってほしいのは、シャッターを開ける経営者が増えて、事業として継続していくこと。そういう意味では、まだ途中経過です。」と。
まちの商店街で一度下りたシャッターが再び開き始めたら、岩槻はさらに面白いまちになりそうですね!
岩槻で生まれ育ち、まちの活性化に尽力している田中さんと、1年半ほど前から岩槻に住んでいる田元さんご家族。共通しているのは、岩槻がもっともっと楽しく、元気なまちになってほしいという「岩槻愛」に溢れている点でした。岩槻だからできる、という自信さえ感じました。
若い人たちの力に期待して、彼らにまちの中での役割を引き継いでいく田中さんの覚悟や取り組みは、確実に岩槻に新しい風を吹かせていることでしょう。「岩槻は活発なまち」「気軽にチャレンジできるまち」と田元さんのひとこと一言から伝わるワクワク感がその証拠です。
5年後、10年後、岩槻はどのように変わっていくでしょうか。城下町の歴史や人形の伝統と文化を大切にしながら、若い人たちのアイディアで、まちや商店街が賑やかになってほしいですね。「岩槻らしさ」に期待します♪
●「岩槻リノベーションまちづくり」パンフレット
岩槻リノベーションまちづくりガイドブック
●「岩槻まちの戦略会議」の活動
【特集】「岩槻まちの戦略会議」メンバーが語る!岩槻の未来♪
「岩槻駅東口お店探検まち歩きツアー」に親子で参加しました!
お客様・お店・地域が良くなる "岩槻まちゼミ"
●田元さんInstagram
foopan(@takako.foopan) • Instagram写真と動画