子どもが生まれて2009年に見沼区に引っ越してきた山形華子さん(38歳)。
さいたま市で働く夫(一之さん 48歳)と息子(太平くん 8歳)、娘(里実ちゃん 2歳)の4人暮らし。
―――二人ともどのようなところで生活したいと思ったのですか?
住む場所の理想として、都会的な賑やかなところより児童期まで過ごしたような自然がいっぱいある環境の中で生活したいとずっと思っていました。
―――どのようにしてさいたま市のこの地を探し当てたのですか?
緑がいっぱいで空気が良く、穏やかに時が流れる場所が理想で、そのような「里山」の雰囲気を求めて家さがしを始めたのです。八高線のあたりも候補にあがりましたが、夫の職場への通勤を考えると現実的でありません。不動産屋で働いていた頃の知識を活かして、さいたま市内で「市街化調整区域」を中心に探すことにしました。そして、ここを見に来て「これだ!」と思ったのです。
―――実際に住んでみてここはどのようなところですか?
ここには秩父のような山はありませんが、見沼たんぼの景色が広がっていて雑木林があり、山のふもとの様な風情があります。ここは、バス通りからすぐの場所ですが、鳥のさえずりも聞こえます。都会での生活との一番の違いは、時間の流れです。自然とともに時が感じられセカセカしていない、というか、落ち着いた気持ちで生活できる環境です。
―――家庭菜園ではどのようなものがつくられているのですか?
キャベツ、白菜、レタス、ブロッコリー、ほうれん草、小松菜などの野菜です。近くには直売所もあり、地場産の農産物を買ってきます。ここに住むようになってからは、旬のものを食べるようになりました。採れたて新鮮な旬野菜は美味しさが違います。そして今は、収穫した柿を軒下に吊るして、干し柿を作っています。
―――お子さんたちは自然の中でいろいろなことを感じたり覚えたりするのでしょうね。
例えば、子どもたちはゆったりと流れる時間の中で自由奔放に育っています。自らの経験の中から「転んだら痛い」「ここは危ない」ということを覚えてほしいです。自然は優しいですよ。縁側からすべり落ちても、下は土や草ですから、大けがにはなりません。子供たちも季節の移ろいを感じながら、いろいろなことにチャレンジでき、子育てにはとても良い環境だと思います。
―――市民田んぼで稲作りもしているそうですが、お子さんたちもいっしょに参加しているのですか?
NPO法人が中心となって活動している市民田んぼが近くにあります。2012年から仲間に加わって、循環型伝統農法の米作りをしながら里地・里山保全活動をしています。太平は4歳くらい、里実も生まれた年からいっしょに参加しています。そこでは、子供たちは自分で考えて何でもやる中で、ダメなことは「ダメ!」と厳しく叱られます。みんなが協力し合って力を合わせないとうまく進められない作業がありますから。親以外の人からそうやって叱られたり、許されたりする経験は、子どもたちにとってとても貴重で大切なことだと思います。
―――緑豊かなところにすんでみたいと考えている方へ、メッセージをお願いします。
「時間がゆっくり流れる」と言いましたが、それは、ここに来て初めて気がつく事です。今の世の中は、時間に追われることが多いと思います。それに疲れたら、一度散歩に来てみてください。空気と音を感じて深呼吸してほしいですね。 さいたま市内ですから、通勤にも困りません。その便利さと緑豊かな自然との両方がこの地域にはあります。まずはこの魅力を感じるためにいらしてください。
山形さんは「空気が澄んでいて静か」という言葉を使っていましたが、取材に行った我々は、空気はもちろんですが「音までも澄み切っている」という印象を受けました。