希望(ゆめ)を未来へつなぐ道 浦和美園ー岩槻地域ガイド

Blog
浦和美園~岩槻 暮らしの日記帳

【特集】先祖代々暮らしてきた岩槻 ~長年付き合っている地域の人とも、新しくやって来た人ともつながりを大切にしたい~

2021.01.05

suzuki_202012.jpg suzuki_copy.png

創業明治4年から続く鈴木酒造の6代目鈴木徹さん(67歳)。
岩槻で奥様・3人のお子さんと暮らしてきました。

iwatsuki_201224_3.jpg


岩槻の暮らしの移りかわり

―――創業当初からこの場所で酒造りをしていたのですか?

創業者の鈴木芳兵衛は新潟出身で、伊奈町で修業をしたあとに岩槻の本宿の名主さんの土蔵を借りて明治4年に創業しました。その後、15年くらいしてからこの場所に造り酒屋を建てました。大正に入って建て増しをして今の敷地となりました。「水」が良かったのでしょうね。今でも井戸水を使用して酒造りをしています。
私は大学を卒業して8年ほど金融関係の会社で務めていましたが、30歳で酒屋の6代目として入り、現在まで続けてきました。

iwatsuki_201224_4.jpg

―――昔と今では、岩槻のまちの様子も変わりましたか?

そうですね。お城があった江戸時代は、武家屋敷が並ぶ地区と町人のまちが木戸(門)で分けられていたそうですよ。浦和・大宮が宿場町だったのに対して、岩槻はお城を拠点とした城下町として賑やかなまちが成り立っていた時期もあったと聞いています。
すぐ隣にある「八幡(はちまん)神社」は、武士の神社と言われていました。今でも士族の子孫が住んでいる、この辺りはそんなところです。
私が子どもだった昭和30年代は、大きな人形店がたくさんありましたし、商店街には肉屋、八百屋、魚屋などがあって、よく「おつかい」に行かされました。今でも魚屋や八百屋はありますが、商店も少なくなって、スーパーやチェーン店で買い物をする人が増えましたね。ここ10年間で人口は減りましたが、最近は岩槻駅周辺にマンションが建てられ、若い人たちが少しずつ増えてきたように思います。

iwatsuki_201224_5.jpg


ギャラリーや酒蔵資料館にお越しください!

―――タイムスリップした気分です。鈴木酒造さんに来たら、だれでも社長さんにこのような話を聞くことができますか?

いいですよ。気軽に私に尋ねてください。
今から25年前に米倉庫だったこのスペースを酒店として改装し、人が集まれるように1階奥にミニギャラリー、2階に本ギャラリーと酒蔵資料館をつくりました。

―――ギャラリーは誰でも借りることができますか?

はい。普段は季節ごとに日本画や人形を飾っています。日本画は、本宿で創業した当時の名主さんのお宅の関根将雄画伯の作品です。
また、「ギャラリー 万両」として貸出できます。これまで、バイオリンやフルートの演奏、工芸品の展示などが開催されました。

iwatsuki_201224_6.jpg

―――2階の「酒蔵資料館」を見せてください。

もともと、屋根裏だった場所です。昔からの酒造りの道具や生活に使っていたものを捨てずに置いてありました。それを展示して資料館にしようと思って作りました。
春の「桃の節句」や秋の「重陽の節句」には、たくさんの人形や吊るし雛を飾っています。
酒造りの道具や樽は昔、実際に使っていたもので、酒造りの工程や様子がわかるように展示しました。暮らしの中で使用していた電話機やミシンなども全て、うちで使っていたものです。
初代の芳兵衛が当時、温泉旅行先のお土産にした塗り物・陶器の調度品やそこで出会った画家に書いてもらった日本画・掛け軸なども展示していますのでご覧になってください。

iwatsuki_201224_7.jpg


地域とつながりを大切にしてきました!

―――今年は新型コロナウイルスの関係で自粛が続きましたが、ご商売はどうでしたか?

やはり大変でした。
そんな中、10月1日は「日本酒の日」でしたが、料亭ほてい家さんでイベントが開催されました。お互いのスペースを取る等感染予防対策をして、お酒と和食を楽しむ会でした。私が日本酒の説明をしたあと、利き酒のように飲み比べ、食材や料理に合うお酒を見つけて楽しみました。
その日は「全国一斉日本酒で乾杯!2020」運動も各地で開催されていたので、SNSを活用して一斉に「乾杯!」。新しい形の日本酒のコミュニケーションで盛り上がりました。

―――岩槻では、料亭の存在も身近なものに感じられますね。

酒屋は料亭にお酒を納めていますから、付き合いは深いです。
岩槻は料亭が6軒あって、地域の人たちや地元の企業に利用されてきました。今でも節句や法事で人が集まる時は料亭を利用しています。

iwatsuki_201224_9.jpg

―――岩槻に住み始めた方々に伝えたいことはありますか?

歴史があり、人の良さがあり、落ち着いたまちです。はじめは敷居が高いように感じるかもしれませんが、どうぞ、気軽にお店に入って声をかけてください。

iwatsuki_201224_10.jpg


【取材エピソード】

鈴木酒造さんには、これまでも何度か訪れました。社長の鈴木さんにお会いしたこともありましたが、今回、お話をじっくり聞いてみると何ともチャーミングな表情で歴史やまちのことを教えてくださったので、時間を忘れて聞き入ってしまいました。
近所のお医者さんのことも
「ずっとそこのお医者さんに通っているよ。先代からよく知っているので何でも言えるし、何度も聞ける。」
とサラっと語ってくれました。そのご近所付き合いもいいものですね。ずっと大切にしてほしい、と思いました。

岩槻の歴史を知って、その風情が残っている小径を歩きながら当時の様子を思い描くと、どこか懐かしく、穏やかな気持ちになります。岩槻に長く暮らしている人たちは「岩槻の良さなんて特にないよ・・・」と言いますが、あまりにも当たり前すぎて、気が付いていないのかもしれません。それも良さのひとつ。岩槻のまちやそこに住む人の人柄に触れたら、きっとこのまちでの生活も楽しくなるでしょうね。

iwatsuki_201224_11.jpg


【関連情報】

◆鈴木酒造
http://www.suzukishuzou.com/

◆酒蔵資料館
http://www.suzukishuzou.com/03_sakagura/

◆料亭 ほてい家
http://www.hotei-ya.jp/

一覧に戻る

エリアで探す

選択してください